請負仕事を続けるために、頼まれた以上を1つ載せる。小さな工場のお客さん対応の考え方
下請け・請負仕事を「請け負い続ける」ために何を意識しているか。最低限の契約履行のうえに小さな工夫を1つ載せる、スタッフへの理由共有、手間と効率のバランスについて、クリーニング工場経営者が解説します。
小さなクリーニング工場を経営しています。 うちは、元請けさんからの 請負仕事(下請け) がメインです。
リネンサプライ業界に限らず、製造系・サービス系の中小事業者は、何かしらの形で「請負」「下請け」の構造に組み込まれていることが多いと思います。
今日は、その請負仕事を 「請け負い続けるために」何を意識しているか という、現場の話をまとめます。
「言われた通りに納品する」は前提でしかない
請負仕事には、必ず細かい条件がついてきます。
- 単価
- 包装の仕方
- 納品の形
- 現場での回収方法
- 回収したものの分け方
- 仕分けて納品する手順
…と、種類は意外と多いです。
これらに対して「わかりました」と返事をして、言われた通りに納品するのは当たり前。 ここは、請け負ううえでのスタート地点に過ぎません。
最低限を守ることは、差別化ではない。 ただの「契約履行」です。
差を生むのは、その先の話になります。
頼まれたこと以上を、1つ付け加える
うちが意識しているのは、契約の前提のうえに 「プラスアルファ」を1つ載せる ことです。
請け負った内容に対して、
お客さん(元請けさん)が頼んだこと以上のことをしてくれているな
と思わせる何かを、1つでもいいので付け加える。
これがあるかないかで、長期的に 「うちと取引を続けたい」と思ってもらえるか が変わってきます。
気付いてくれる人に向けてやる
正直に言うと、お客さんは全然気付かないかもしれません。 ここは現実として、覚悟したうえで取り組む必要があります。
それでも、
- 人によっては「こういう工夫をしてくれているな」と気付く
- 気付いてくれる人がいる前提で続ける
というスタンスで、やっていく。 気付く人に向けてやる という割り切りです。
「ちょっとしたこと」の具体例
実際にやっていることは、本当に小さなことです。
例:納品の置き方
頼まれているのは「棚に入れる」だけ。それだけだと、棚に押し込めば終わります。
うちでやっているのは、
- 棚に入れたとき 綺麗に見える向き で置く
- 名札が見えやすい向き で入れる
- 重ねるときに 取り出しやすい順番 にしておく
といったレベル。
「そんなの当たり前だよ」と感じる人もいるかもしれません。 でも、現場で30人・50人と同じ作業を回すときに、「ここまで揃える」のが当たり前になっている工場と、なっていない工場 には、確実に差が出ます。
なぜ「頼まれた通り」だけでは続かないのか
これは、クリーニングに限らず、製造・サービス系の請負全般に共通する構造の話です。
洗って綺麗になって、畳まれて包装されている
これは、お客さん(元請け / その先のエンドユーザー)から見れば 「当たり前」「普通」 です。 頼まれた通りにやっているだけでは、他の工場との違いが生まれません。
違いが生まれないと、何が起きるか
違いがないと、仕事を増やそうとしたときに、
| 取れる理由 | リスク |
|---|---|
| 値段が安いから | 競合の値下げで簡単に逆転される |
| 知り合いの紹介 | 担当者が変われば失う |
| たまたま空いてる工場だったから | 別工場が空けば流れる |
くらいでしか取れなくなります。 逆に言うと、その理由で他の工場に仕事が流れる こともある。
つまり、運や人脈・顔の広さに頼る取引になってしまう。 担当者が変わったら、一緒に仕事も離れていく、という構造にもなりがちです。
だから 「他社との差をどうやってつけるか」 は、請け負う側にとって極めて大事になります。
スタッフと「理由」を共有する
差をつけるための「ちょっとした工夫」は、結局のところ 現場のスタッフと一緒にやる ことになります。 ここで大事なのが、理由と一緒に共有する ことです。
言うべきは「やり方」より「なぜ」
「こう置いてください」だけだと、ただの作業指示になります。 そうではなく、
「この置き方は、お客さんにとってこういうメリットがあるんです」 「お客さん側で取り出しやすくなるから、こうしてるんです」
と、お客さんへのサービス・納品の質としてやっている と伝える。
そうするとスタッフさんも、
「今やっている作業は、お客さんにとってこういう意味がある」 「お客さん対応として、自分はこの仕事をしている」
と認識した上で作業してくれます。品質に「気持ち」が乗っかってくる ようになります。
| 伝え方 | スタッフの認識 | 品質への影響 |
|---|---|---|
| やり方だけ伝える | 作業を消化している | 「最低限」で止まりやすい |
| 理由とセットで伝える | お客さん対応をしている | プラスアルファが自然に生まれる |
これがある現場と、無い現場では、長期的な納品物の質が変わってきます。
手間と効率のバランス
正直に書くと、この「プラスアルファ」は 手間がかかります。 効率の面では、悪くなる部分もあります。
ここに関しては、現場スタッフさんの努力に頼る 部分が出てきます。
ただし、
- 神経を使うが
- 時間がかかりすぎると利益が出ない
ので、一定のスピードを保ちながら、工夫して手間をかける という、難しいバランスを取り続けることになります。
バランスを取るために意識すること
- 「プラスアルファ」を 作業手順に組み込んで しまう(思い出さなくていい状態)
- 1作業あたりの 基準時間は崩さない
- 慣れてくると 手間がほぼ0 になる工夫を選ぶ
このバランスを成立させ続けることが、結局 「請け負い続けられる」 ということなのかなと思っています。
仕事が切れる時は、その真逆
逆に、請け負いが切れてしまう時は、ほぼ真逆のことが起きています。
- 頼まれた 最低限のこともできていない
- こちらで 勝手に解釈 して、自分たち工場が楽になるやり方に変えてしまっている
このどちらかが起きると、たいてい仕事は離れていきます。
「楽な方に倒す」と、目の前は楽になります。 でも、お客さん側には違和感が溜まっていく。 気付いたときには別の工場に切り替わっている、という流れになります。
信用は積み重ね、でも一瞬で崩れる
「頼まれたこと以上をやる」のは、1日2日で印象付けられるものではありません。 毎日・毎週・毎月・半年・何年と積み重ねること が前提になります。
ただ、難しいのは:
積み重ねていれば、どこかでサボっていい、ということではない
何年もしっかりやっていたとしても、一瞬だけ気を抜いて適当な仕事をしてしまうと、それまでの信用が台無しになってしまう ことがあります。
この「壊れやすさ」が、本当に難しいなと、いまだに思いながらやっています。
まとめ
- 言われた納品方法を守るのは 当たり前。請負のスタート地点
- そのうえで、頼まれたこと以上のことを1つ付け加える
- お客さんが気付かなくてもいい。気付いてくれる人に向けてやる
- 内容は本当に小さなことでよい(綺麗に置く、名札の向き、など)
- スタッフには 「理由」と一緒に共有する。品質に気持ちが乗る
- 手間と効率の バランスを取り続ける のが、請け負い続けるということ
- 仕事が切れる時は、最低限を守れていない / 勝手に楽な方に解釈している
- 信用は積み重ねだが、一瞬で崩れる 性質も持っている
異業種の方でも、お客さんのためにいろんな工夫や努力をされていると思います。 業界の枠を越えて、「頼まれた以上」を1個積む という発想が、参考になる部分があれば嬉しいです。
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この内容はPodcast「こまつラジオ」Ep.016で詳しく話しています。
うちの工場では、こうした「頼まれた以上」のサービスを安定して提供するために、工場管理アプリ KIMAMANOSHIBUTSU を自社開発して運用しています。納品の手順や注意事項を画面で示すことで、現場が考えなくても 品質を一定に保つ 仕組みです。他のクリーニング工場にも提供を始めたので、気になる方はぜひ。