仕事量とスタッフ人数のバランスをどう取るか。小さな工場で工夫している3つのこと
仕事量の増減に振り回されない工場をつくるために、労働契約の最低ライン設定、時給制の活用、短時間勤務中心の人員構成という3つの工夫を、クリーニング工場経営者が解説します。
「仕事量とスタッフ人数のバランス、どう取っていますか?」 ——同業の小さな工場の方と話していると、必ず出てくる悩みのテーマです。
正解のない領域です。うちでも完璧ではなく、毎日やり繰りしながら回しています。 それでも、雇用契約の組み方と人員構成の比率 で、ある程度コントロールできる部分はあります。
この記事では、うちの小さなクリーニング工場で実践している3つの工夫をまとめます。クリーニングに限らず、仕事量の変動が大きい小さな工場 に共通する考え方だと思います。
なぜ仕事量とスタッフ人数のバランスは難しいか
工場で一番難しいのが、
仕事量 × スタッフ人数 × 労働時間 のバランス
ここです。
仕事量がずっと一定なら、同じ人数を雇い続けていればいい。でも実際は、
- 新しい契約が入ってきて、人手が足りなくなる
- 既存の契約が終わって、仕事量が減って人手が余る
の繰り返しです。
「人手不足」より「人手余り」の方が難しい
不思議に聞こえるかもしれませんが、人手が足りない分には対処の余地があります。
- シフトを増やしてもらう
- 社長や管理者が現場に入る
- 採用を進める
本当に難しいのは、人手が余ってしまった時 の方です。
雇う時には「週に何時間シフトに入ります」とある程度決めて入ってもらっています。それなのに仕事が減って希望のシフトに入れないとなると、
- 月のお給料が想定より減る
- 不満が溜まる
- 最悪、転職される
- → また仕事が増えた時に今度は人手が足りない
という 負のループ に入る可能性があります。
仕事を「減らさない」ようにするのも難しいし、「増やしすぎない」ようにするのも難しい。両側に難しさがある領域です。
工夫1:労働契約の「最低ライン」を低く設定する
うちで一番効いている工夫がこれです。 雇う時の 労働契約の最低ラインを低く設定 すること。
悪い例:希望をそのまま受ける
「1日8時間、週5日入りたいです」と希望されて、そのまま「分かりました、そうしましょう」と契約する。
これは仕事量が安定している前提なら成立しますが、増減のある工場ではリスクが大きい運用です。仕事が減った時に下げる余地がないので、不満が直接出ます。
うちの例:最低ラインで合意 + 柔軟に増やす相談
「基本は週3日、1日4時間で、仕事がたくさんある時は週5日とか頼むかもしれません」
このように 基本ラインは低く取り、忙しい時は相談で増やす形 で同意してもらっています。
採用面接の段階で 「仕事が減ることもある」 と素直に説明し、それを了承してもらえる人に入ってもらう、という運用です。
この設計の効果
- 仕事が減った → 最低ラインまで戻すだけで済む(「想定の範囲内」)
- 仕事が増えた → 「ちょっと多めに入れますか?」と聞いて柔軟に増やせる
- 不満や揉めごとに繋がりにくい
「想定の範囲内」と感じてもらえるかどうかが、不満が溜まるかどうかの分かれ目です。
工夫2:ほぼ全員を時給制で雇う
うちは月給の人はほとんどおらず、基本的に時給の人で工場を回して います。
月給と時給の経営インパクト
| 雇用形態 | 仕事量が減った時 | 仕事量が増えた時 |
|---|---|---|
| 月給制 | 固定費として残る、即座に下げにくい | 残業 or 追加雇用 |
| 時給制 | シフト調整で柔軟に減らせる | シフト追加で柔軟に増やせる |
小さな工場ほど、仕事量の変動の振れ幅が経営にダイレクトに効きます。人件費を変動費的に持てるかどうか で、工場の体力がだいぶ変わります。
うちは「月給で安定して欲しい」というニーズより、「仕事量に追従できる柔軟性」を優先しています。
工夫3:体力面でも短時間勤務が合理的
これは少し違う角度の話です。 クリーニング工場は体力仕事の部分もあるので、本人が「1日8時間、週5日入りたい」と言っても、体力的にきつい ことが多いです。
8時間勤務の現実
仮に8時間働けたとしても、工場の効率で考えた時には、
- 最後の3時間は パフォーマンスや集中力が落ちる
- 検品など気を遣う作業でムラが出る
- 結果として品質や生産性に影響する
ので、無理に長時間に揃えるのが必ずしも合理的ではないんです。
1日3〜5時間という適正解
うちでは、1日3〜5時間 くらいの働き方を希望する人を雇うことが多くなっています。
人によって集中力の持続時間は違うので、
- 3時間で集中が切れる人もいる
- 5時間最後まで集中して走り切る人もいる
採用の時に工場の性質上の話をさせてもらって、試用期間で実際の様子を見ながら、最終的にベースの勤務時間を本人と決めていく 流れにしています。
全体の組み方:短時間・少日数を半分以上で固める
3つの工夫を踏まえて、人員構成全体で意識しているのは、
少ない時間・少ない日数で働きたい人を、全体構成の半分以上で固めておく
ということです。
この比率がもたらす効果
- 仕事が減った → 最低ラインまでシフトを戻すだけで吸収できる
- 仕事が増えた → 「ちょっと多めに入れますか?」と聞いて柔軟に増やせる
- フルタイム希望者ばかりに比べて、両方向に追従しやすい人員構成 になる
逆に、フルタイム希望の人ばかりで固めてしまうと、片方向(増やす方)にしか柔軟性がなくなります。減った時に苦しい構造です。
今日から試せる3つのアクション
もし「うちもこの問題に悩んでいる」という方がいたら、次の3つを試してみてください。
1. 採用時に「最低ライン」を共有する
「仕事の状況によってシフトが変動する可能性がある」を最初に伝える。 入ってもらってから言うのではなく、面接時に同意してもらう のが大事です。
2. 月給→時給への移行可能性を検討する
新規採用は時給ベースで揃え、既存の月給スタッフは無理に変えなくていいです。 新しく入る人は時給 という形で、徐々に変動費比率を上げていくと、工場の柔軟性が高まります。
3. 短時間勤務希望者を意図的に増やす
求人票で「1日3〜5時間OK」を強調する。 フルタイム希望者を断る必要はないですが、短時間希望者を採用候補に積極的に入れる ことで、人員構成のバランスが取れていきます。
まとめ
- 工場経営の最大の悩みは、仕事量 × スタッフ人数 × 労働時間 のバランス
- 「人手不足」より 「人手余り」の方が難しい
- うちの工夫1: 労働契約の最低ラインを低く設定 + 忙しい時は相談で増やす
- うちの工夫2: ほぼ全員時給制 で人件費を変動費的に持つ
- うちの工夫3: 1日3〜5時間 の短時間勤務を中心に組む(体力面でも合理的)
- ポイント: 短時間・少日数希望者を全体の半分以上で固める と両方向に追従しやすい
完璧な解はありませんが、雇用契約の組み方と人員構成の比率で、ある程度コントロールできる部分はあります。
うちの場合のやり方として、参考になる部分があれば嬉しいです。
この内容はPodcast「こまつラジオ」Ep.013で詳しく話しています。
うちの工場では、こうした「仕事量に応じた柔軟なシフト運用」を支えるために、工場管理アプリ KIMAMANOSHIBUTSU を自社開発して運用しています。シフト管理や作業実績の可視化で、人員構成の最適化を判断しやすくする仕組みです。