小さな工場のスタッフ目標は「1枚何秒」で揃える。新人もベテランも、毎シフト見る話
スタッフ目標を「1作業あたりの所要時間」で統一する方法。基準の作り方、新人・ベテランへの運用、クリアできない時の3ステップ対応まで、クリーニング工場経営者が現場のリアルベースで解説します。
「スタッフへの目標設定、どうしていますか?」 ——同業の小さな工場の方と話すと、ほぼ必ず出てくる話題です。
うちの工場では、すごくシンプルなルール1つで運用しています。それが、
1作業あたりの所要時間を、共通基準として置く
というやり方です。
この記事では、その基準の決め方、新人・ベテランへの運用、クリアできない時の対応まで、現場のリアルベースで整理します。クリーニング工場に限らず、手作業中心の小さな工場 に共通する考え方だと思います。
なぜ「時間」を基準にするのか
スタッフ目標を立てるとき、選択肢はいくつかあります。
- 売上目標
- 生産枚数
- 評価シート(協調性、態度など)
- 1作業あたりの所要時間 ← うちの選択
時間を基準に選んだ理由は3つです。
- スタッフが自分でクリアできているか分かる:時計とにらめっこすれば判定可能
- 管理者の評価が感覚に寄らない:数字なので説明しやすい
- 直接、利益率に効く:時間 × 人件費 = 工場の生産コスト、ここに直結
「フェアで、説明可能で、経営にも直結する」基準として、時間が一番素直に機能しています。
基準の作り方:時間 + 折り方・順番をセットで
うちでは、洋服ごとに目標時間が決まっています。
- この洋服は 1枚5秒
- こっちは折る順番が複雑なので 1枚8秒
- これは仕上げまで含めて 1枚○秒
ただし、時間だけ示しても人によって動きがブレるので、折り方・順番もセットで決めて います。
- 何回折り畳むか
- どの順番で畳むか
- どの手の動きで進めるか
ここまで決めると、誰がやっても同じ秒数で再現できる 状態になります。マニュアルというほど厳格ではないですが、「やり方が一貫している」ことが目標時間の前提です。
そして、特に急いでもらう必要はありません。淡々とパッ、パッ、パッと畳むだけで届く 時間にしてあるのもポイントです。
新人さんは「3ヶ月で基準クリア」
面接の段階で、この目標設定の話をしています。
ただ、実際働いてみると向き不向きがあるので、試用期間 は設けています。
その期間で「真面目に教わったことをやってもらえれば、たいていはクリアできる」くらいのハードルにしてあります。もちろん個人差はあるので100%とは言い切れませんが、3ヶ月くらいシフトに入って達成を目指す のがうちの基本ペースです。
新人さんに対しては「達成度を見る」立場で、できていない部分を都度フォローしていきます。
ベテランさんも、毎シフト見続ける
ここがうちの運用で一番大事にしているところです。
「ベテランはクリアしているから見なくていい」とは思っていません。 むしろ、ベテランほど見続ける必要があります。
慣れによるスピードダウンが一番怖い
- 新人のときは一生懸命やっていてクリアしていた
- ベテランになって作業に慣れてくると、気づいたら基準を下回っている
- 本人は普通にやっているつもりだが、計測すると数字は確実に落ちている
これに気づくのが遅れると、工場全体の生産性・人件費率・利益率がじわじわ削れていきます。
だから、新人もベテランも区別なく、管理者である私が 端から、試しに時計を見ながら チェックする。これを毎シフト続けています。
油断は人間だから出る、でも見ざるを得ない
人間なので、
- その日の体調や気分
- やる気が出ない日
- 力が入らない、気が抜ける日
は誰にでもあります。1日くらいなら波として許容できます。
ただ、油断するとその日の生産性は落ちます。
少し厳しい言い方になりますが、工場経営を継続していくためには、生産性のハードルは常にクリアし続けないといけない。だから、見ざるを得ないという感覚で日々の作業を見ています。
クリアできていない時の対応:3ステップ
クリアできていない時の動き方は段階を分けています。
Step 1: その場で軽く声をかける
「これ何秒くらいでお願いします」と、その場で軽く声をかける。
これで戻ることがほとんどです。
Step 2: 1日改善されなければ、その日は仕方ない
それでも改善されなければ、その日はしょうがないとします。1日くらいは波もあります。
ここで強く詰めても、本人の気分が下がるだけで何も得るものがありません。
Step 3: 何日も続くなら、1対1でミーティング
それが何日も続くようなら、1対1でミーティング をします。
- 何か事情があるのかを聞く
- 工場としては生産性のノルマを達成しないと経営が成り立たないことを共有する
- なんとかやれそうかどうか、一緒に考える
ここまでくると、できれば避けたい話に踏み込まざるを得ません。クリアできていない状態が続くと、シフトを減らさざるを得ない ところまで進むこともあります。
小さな工場ほど、ここはシビアにならざるを得ません。1人当たりの生産性が落ちると、すぐに利益が削れる構造だからです。
「数字で見える基準」がある効果
時間という数字で目標を置くと、副次的なメリットも出てきます。
1. スタッフ自身が自分で判定できる
「今、自分は基準クリアしてるかな?」を、本人が時計を見れば自分で確認できます。「言われる前に自分で気づける」のが大きい。
2. 評価がフェアになる
数字なので、好き嫌いや感覚で評価が動きません。 「あの人は気が合うから良い、合わないから悪い」みたいなブレが起きにくい。
3. 経営判断とも繋がる
時間 × 人件費 = 工場の直接コストなので、目標が経営の数字と繋がっています。スタッフ目標を達成 → 工場の利益率が上がる、という線が一本通る。
今日から試せる3つのアクション
もし「うちはスタッフ目標が曖昧だな」と感じる方がいたら、次の3つを試してみてください。
1. 社長・管理者が自分で時間を計測する
まずは社長や管理者自身が、自分の手で「1枚何秒か」を計測 してメモする。これが基準の出発点です。
2. 折り方・順番もセットで決める
時間だけ伝えると動きがブレるので、折る回数・順番までセット で決める。誰がやっても同じ秒数で再現できる形にする。
3. 新人もベテランも区別なく見る
新人だけ見るのではなく、ベテランも毎シフトでチェック。慣れによる油断がじわじわ利益を削るので、ここを見続けるかどうかで1年後の数字が変わります。
まとめ
- スタッフ目標は「1作業あたりの所要時間」というシンプルな基準で揃える
- 時間 + 折り方・順番をセットで決めて、誰がやっても同じ秒数で再現できる形に
- 新人は3ヶ月でクリアを目指す
- ベテランも 毎シフト見続ける(慣れによる油断がじわじわ効く)
- できていない時は声かけ → 仕方ない日もある → 続くなら1on1
- 必要なら シフト調整までシビアに踏み込む
数字で見える基準があると、評価が感覚に寄りません。スタッフにとってもフェア、工場としても利益が守れる、という両立がしやすくなります。
うちの場合のやり方として、参考になる部分があれば嬉しいです。
この内容はPodcast「こまつラジオ」Ep.011で詳しく話しています。
うちの工場では、こうした「1作業あたりの所要時間」を現場で共有しやすくするために、工場管理アプリ KIMAMANOSHIBUTSU を自社開発して運用しています。作業時間の計測と振り返りを軽くできる仕組みで、目標設定の土台を作るのが狙いです。