工場パートさんへの声かけで生産性を上げる方法
「急いで」では伝わらない。クリーニング工場経営者が実践する「数字で声をかける」マネジメント。時間と枚数で目標を伝え、隙間時間をなくし、1時間で100枚の生産性アップを実現した方法を解説します。
「もう少し急いでください」「早くやってもらえますか」
工場の管理者なら、一度はこう言ったことがあるのではないでしょうか。
私はクリーニング工場を経営していますが、この言い方を意識的にやめました。代わりに「数字で声をかける」ようにした結果、目に見えて生産性が変わった。今回はその具体的なやり方を書いていきます。
「急いで」が伝わらない理由
「急いでください」「早くやってください」の何が問題か。
"急ぐ"の認識は人それぞれだということです。
手を速く動かすことだと思う人もいれば、丁寧さを少し落として進めることだと思う人もいる。本人は急いでいるつもりでも、管理者から見るとスピードが足りていない。そこで「もっと急いで」と言ってしまうと、「急いでるのに…」と摩擦が生まれます。
これは指示の出し方の問題であって、パートさんの能力の問題ではありません。
数字で伝えると、解釈のズレがなくなる
代わりに実践しているのは、時間と枚数をセットで伝えることです。
具体的には:
- 「あと15分あるので、これを15分で終わらせてください」
- 「これは1分で何枚くらい畳める作業なので、自分で数えながらやってみてください」
数字で伝えると、誰が聞いても同じ目標になります。解釈のズレが起きない。「急いで」という曖昧な指示と比べて、摩擦が激減します。
無理のないペースが前提
ここで大事なのは、めちゃくちゃ急がせているわけではないということ。
「この畳み方で畳めば、この洋服なら何秒で畳める」という計算に基づいた、無理のないペースで達成できる目標を設定しています。正しいやり方で淡々とやれば、自然と達成できるライン。
急がせるのではなく、正しい速度を可視化する。これが持続可能なマネジメントです。
周りと比較しない。個別に目標を設定する
手作業が多い工場では、人によって畳める枚数に差があります。ベテランと新人では当然違う。これはしょうがないことです。
大事なのは、周りの人と比較するのではなく、その人自身の中でなるべく高いパフォーマンスを出してもらうこと。
普段の作業を見ていると、「この人なら1分でこのくらい畳める」というのが分かってきます。そこから遅れていたら、「1分でこのくらい畳めるように意識してみてください」と個別に伝える。
一人一人に対して個別の目標を設定する。 そうすればパートさんも立ち止まらず、考えずに手を動かせます。
隙間時間をなくす声かけ
もう一つ意識しているのが、作業と作業の間の「何しようかな」の時間をなくすことです。
今やっている作業が終わりそうなタイミングで、次にやってもらう作業を私が前もって準備しておく。終わった瞬間に「次あっちお願いします」「あれをやってもらえると助かります」と声をかける。
パートさんのシフトは時間で決まっています。その時間をなるべく**「売上になる作業」**に使ってもらいたい。
「売上になる作業」に集中してもらう
前準備(洗う前の段取りなど)もそれ自体は仕事ですが、納品できる状態にならないとお金にはなりません。
だから前準備はできる範囲で私がやっておいて、パートさんは出荷できる状態に仕上げる作業に集中してもらう。管理者の仕事は「パートさんが売上を生む作業に集中できる環境をつくること」だと思っています。
効果:1時間で100枚の差
これを意識して実践するだけで、1時間に畳める枚数は一人あたり何十枚と変わってきます。
同じ時間に10人働いていて、各人がプラス10枚多く畳めるようになれば、1時間で100枚の生産性アップ。これを1ヶ月、3ヶ月、半年と続ければ、少ない人数で同じ仕事量をこなせるようになります。
前回のエピソードでも話した通り、毎年最低賃金が上がる中で人件費率の上昇を相殺するには、生産効率を上げるしかありません。その中で「声かけを変える」というのは、一番シンプルで、コストゼロで、今日から始められる方法です。
まとめ
- 「急いで」「早く」は解釈がズレるので使わない
- 代わりに「あと15分」「1分で何枚」と数字で伝える
- 周りと比較せず、一人一人に個別の目標を設定する
- 隙間時間をなくす声かけで、シフト時間の密度を上げる
- 管理者の仕事は「パートさんが売上を生む作業に集中できる環境をつくること」
補足:声かけの「次」にあるもの
声かけで生産性が上がった次のステップとして、うちでは工場用アプリで「次にやること」を画面に表示する仕組みも作っています。
声かけは管理者が近くにいないとできない。でもアプリなら、管理者がいなくてもパートさんが画面を見て次のアクションを判断できる。
自社で開発・運営しているクリーニング工場向けSaaS KIMAMANOSHIBUTSU では、工程進捗の可視化やバーコードによる個品追跡など、声かけだけでは追いきれない部分を仕組みで補完しています。
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